1945年、敗戦とともに崩壊した「大日本帝国」の植民地主義。38度線以北の故郷を喪失した少年は、「異邦人=在日日本人」として祖国へ帰還し、のちに「戦後文学の鬼才」として特異な作品を書き続けることになるーー。
読み/書くことの「自由」を体現し、日本/文学と生涯にわたり格闘し続けた小説家・後藤明生。彼は、一体どのような問題に囚われていたのか? 現代の日本語小説に最大の理論的影響を与えた作家の「方法」の由来と全体像を、ポストコロニアルの文脈から読み解く、後藤明生に関する初の長篇評論。
【目次】
序章 私という喜劇――後藤明生の「小説」
第一部 『挾み撃ち』の夢――〈初期〉
第一章 「異邦人」の帰還――初期短篇1
第二章 ガリバーの「格闘」――初期短篇2
第三章 「引揚者」の戦後――『挾み撃ち』の夢1
第四章 「夢」の話法――『挾み撃ち』の夢2
第二部 失われた朝鮮の父――〈中期〉
第五章 故郷喪失者 たちの再会――『思い川』その他と「厄介な問題」について
第六章 引揚者の傷痕――引揚げ三部作1『夢かたり』
第七章 それぞれの家/郷 ――引揚げ三部作2および『使者連作』
第八章 「わたし」から「小説」へ――一九七九年・朝倉連作と『吉野大夫』
第三部 混血=分裂の近代日本――〈後期〉
第九章 分裂する日本近代と「転向」――『壁の中』
第十章 メタテクストの方法――八〇年代1
第十一章 戦・死・墓――後藤明生の〝戦争文学〟――八〇年代2
第十二章 日本(文学)を分裂させる――九〇年代
終章 自由と呪縛――引揚者という方法
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