失われたスクラップブック

“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めく、ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ――“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳で登場!

ジュネーヴ短編集

手書きの文字と線画を組み合わせ、コマ割マンガの創始者となったジュネーヴの作家ロドルフ・テプフェール――諧謔精神あふれる半自伝的小説「伯父の書斎」、アルプスの風土をスイスことばで描いた冒険譚「アンテルヌ峠」など珠玉の全8篇をテプフェール自身の挿絵つきで収録。本邦初訳。

□収録作
伯父の書斎
遺産
アンテルヌ峠
ジェール湖
トリヤン渓谷
渡航
グラン・サン=ベルナール
恐怖

スリー

B・S・ジョンソンらと並び、1960年代イギリスで実験小説を発表し、女性であることの困難にも向き合った前衛作家アン・クイン。行方不明の少女が遺したテープと日記帳が夫婦二人の日常を軋ませ、次第に蝕んでいく――作者の自伝的要素も組み込まれた奇妙な長編小説。本邦初訳。

でもここで私は踏み込んで可能であるなら想像のまさに極限に至るまで浸ってみたい。別の水準を、更なる次元を獲得するんだ、できれば私と一緒に二人も連れていって。でも感情はどれくらい遠くまで広がり得るものなんだろう?

不審人物 故人 自叙伝

激動の時代のバルカンで、諷刺と喜劇で鋭い批判精神をふるった作家ブラニスラヴ・ヌシッチ――官僚制度を揶揄するゴーゴリものの喜劇『不審人物』、姓とアイデンティティの関係を問う晩年作の喜劇『故人』の本邦初訳二篇と、作家の人生喜劇を綴った「自叙伝」を収録。

メランジュ 詩と散文

定型韻文詩、自由韻文詩、自由詩、散文、散文詩を混在させ、挿絵とテクストを混淆させた詩人ヴァレリーの精神としての書物――「雑纂」「断章」の文学ジャンルの系譜を、新たな書法(エクリチュール)で切り開く〈散文と詩の混淆(メランジュ)〉。ヴァレリー自身の手による銅版画挿絵入り初版本新訳の決定版。

ポンペイ最後の日(下)

 詳細年譜と訳者解題付 ヴェスヴィオ山爆発で壊滅したポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻がくり 広げられる不朽の名作の完訳。 数々の映画化で世界的に有名な小説であり、娯楽作品でありながら、人間の諸問題をあつかう大作。

ポンペイ最後の日(上)

ヴェスヴィオ山爆発で壊滅したポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻がくり 広げられる不朽の名作の完訳。 数々の映画化で世界的に有名な小説であり、娯楽作品でありながら、人間の諸問題をあつかう大作。

二匹のけだもの/なけなしの財産 他五篇

東欧ユダヤ文化の「生き証人」としてポグロム(虐殺)と亡命の記憶を活写した、ドヴィド・ベルゲルソン。
「隠遁者」の筆名でスターリニズムのテロルを予感させる幻想的な作品を発表した、デル・ニステル。
スターリン時代に粛清されたイディッシュ文学の代表作家二人の傑作短編集。

ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集

【在庫僅少・重版中2月末でき予定】
ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820~30年代にかけて発表された、ラウパッハ『死者を起こすなかれ』、シュピンドラー『ヴァンパイアの花嫁』など怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳。ヴァンパイア学者が詳述する訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」を併録。

ガリバー

『フランドルへの道』『ファルサロスの戦い』『農耕詩』など、前衛的、実験的小説作品を発表した〈ヌーヴォー・ロマン〉の代表作家クロード・シモン――シモン独自の書法で紡がれた、第二次大戦末期の、とある日曜日の出来事の〈居場所のなさ〉をめぐる初期の長編小説。本邦初訳。

戦争

20世紀のスキャンダル作家セリーヌの死後60年の時を経て発見され、「21世紀の文学史的事件」と国内外で話題を呼んだ幻の草稿群のひとつ、『戦争』――『夜の果てへの旅』に続いて執筆された未発表作品にして、第一次大戦下の剥き出しの生を錯乱の文体で描き出した自伝的戦争小説が本邦初訳で登場!https://www.genki-shobou.co.jp/wp-admin/upload.php

ドイツの歌姫 他五篇

森鷗外『舞姫』を彷彿させる、ドイツ留学したエリート医学生の西欧との出逢い、東欧との疎隔とその葛藤を描く自叙伝的作品『ドイツの歌姫』。古き良き民衆を大らかな共感と深い洞察で活写し、19世紀セルビアのリアリズム文学を確立したラザーレヴィチの中短編6篇を収録。本邦初訳。

稜線の路

人間に潜む根源的欺瞞を暴き出し、非現実を現実に変えてしまう秩序転倒の現代を告発し、在るべき世界秩序を啓示する――『形而上学日記』の哲学者・劇作家ガブリエル・マルセルの哲学思想を先導する〈筋書きの無い演劇〉にして、マルセル戯曲作品の頂点を極めた全四幕の悲劇。本邦初訳。

シラー戯曲傑作選 ドン・カルロス スペインの王子

「太陽の沈まぬ国」と謳われたフェリペ二世治下の盛期スペイン。王妃への秘密の恋に悩む王子ドン・カルロス、自由の国家の実現を目指すポーザ侯爵に、陰謀と策略をめぐらす宮廷の人々を交えて、友情劇、恋愛劇、政治劇が繰り広げられる。前期シラーの自由概念の到達点となった、全五幕の長大な歴史悲劇。

息子が母親に恋する。世間のしきたりが、
自然の秩序が、ローマの法律が
この恋を弾劾するだろう。僕の望むものは
父上の当然の権利と真っ向から対立する。
わかっているが、それでも好きなのだ。

シラー戯曲傑作選 メアリー・ステュアート

16世紀のスコットランド女王メアリーの生涯の〈最後の三日間〉を舞台に、カトリック対プロテスタントの宗教・政治的対立を描いて波紋を呼んだシラーの歴史劇。メアリーの「精神的自由」という理念のドラマを、古典主義規範によって理性と感性の調和として厳密に構成した、全五幕の傑作悲劇。

儚いこの世と無窮のあの世が入れかわるときには、
その変化は、一度にして、瞬きする間もないほど素早く、
生じるよりほかないものなのです。
奥方さまも、神さまのおかげをもちまして、
あの一瞬にして、毅然たるご態度で、この世での希望を退け、
信仰にあふれるその御手で、天国をつかまれたのです。

モン=オリオル

レジャーと治療、自然のスペクタクル、社交と娯楽、投機と事業、源泉所有権をめぐる資本所有者たちのたくらみと諍い、恋愛と姦通――温泉リゾート「モン゠オリオル」を舞台に種々様々な人間たちの「感情」が絡み合う、モーパッサンが描く一大〈人間喜劇〉。

訳者解題の一部をnoteで公開しています。

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乾杯、神さま

メキシコ革命を兵士として生きた後、労働者として、変動するメキシコシティの地を這って生きるヘスサという女性は何者か――ジャーナリストの経験を活かし、一個人の証言を多声的な〈女性〉の物語へと昇華させた、セルバンテス賞受賞の女性作家によるルポルタージュ文学の傑作長編。本邦初訳。


ポニアトウスカ『乾杯、神さま』の本文で、脱字等の誤植がありました。

p.203・上段・5行目
(誤)
わたしは一気に女たちに(改行)
し立てた。

(正)
わたしは一気に女たちに捲し立てた。

ここに訂正してお詫びいたします。

本書訳者解題の一部はnoteで公開しています。

昼と夜 絶対の愛

アポリネール、ブルトン、レーモン・クノー、イヨネスコ、ボリス・ヴィアンら20世紀フランスの前衛作家たちに多大な影響を与えた、不条理の作家アルフレッド・ジャリ――兵役体験における生と存在を夢幻的に描く『昼と夜』、催眠術によって新しい世界を創造しようとする『絶対の愛』の小説2篇を収録。

シャーンドル・マーチャーシュ 地中海の冒険  〈上・下〉

ハンガリー独立運動の道半ばにして斃れた仲間たちから「裁き」の使命を託されたシャーンドル・マーチャーシュ伯爵。果たして彼は、奸智に長けた仇敵たちを捕らえることができるのか? 
悪党どもに正義の鉄槌を下さんとして、神出鬼没の謎多き医師アンテキルト博士とその仲間たちが地中海を舞台に躍動する。
『海底二万里』『八十日間世界一周』を凌駕し、ジュール・ヴェルヌの小説シリーズ〈驚異の旅〉の中でも最大級のスケールを誇る、狂瀾怒濤の海洋冒険物語。上巻は、全五部のうち第三部第四章までを収録。下巻は、第三部第五章から第五部最終章までを収録。エッツェル版挿絵全点を掲載した新訳決定版。

恋の霊 ある気質の描写

斬新な構成、独特な心理描写で、彫刻家である主人公の、三代にわたる女性への愛情が赤裸に描かれる――唯美主義、ダーウィニズムの思想を取り込み、〈性愛と芸術〉の関係を探究し続けた英国ヴィクトリア朝の詩人・小説家トマス・ハーディが最後に著したロマンス・ファンタジー。