激動の時代のバルカンで、諷刺と喜劇で鋭い批判精神をふるった作家ブラニスラヴ・ヌシッチ――官僚制度を揶揄するゴーゴリものの喜劇『不審人物』、姓とアイデンティティの関係を問う晩年作の喜劇『故人』の本邦初訳二篇と、作家の人生喜劇を綴った「自叙伝」を収録。
人間に潜む根源的欺瞞を暴き出し、非現実を現実に変えてしまう秩序転倒の現代を告発し、在るべき世界秩序を啓示する――『形而上学日記』の哲学者・劇作家ガブリエル・マルセルの哲学思想を先導する〈筋書きの無い演劇〉にして、マルセル戯曲作品の頂点を極めた全四幕の悲劇。本邦初訳。
「太陽の沈まぬ国」と謳われたフェリペ二世治下の盛期スペイン。王妃への秘密の恋に悩む王子ドン・カルロス、自由の国家の実現を目指すポーザ侯爵に、陰謀と策略をめぐらす宮廷の人々を交えて、友情劇、恋愛劇、政治劇が繰り広げられる。前期シラーの自由概念の到達点となった、全五幕の長大な歴史悲劇。
息子が母親に恋する。世間のしきたりが、
自然の秩序が、ローマの法律が
この恋を弾劾するだろう。僕の望むものは
父上の当然の権利と真っ向から対立する。
わかっているが、それでも好きなのだ。
16世紀のスコットランド女王メアリーの生涯の〈最後の三日間〉を舞台に、カトリック対プロテスタントの宗教・政治的対立を描いて波紋を呼んだシラーの歴史劇。メアリーの「精神的自由」という理念のドラマを、古典主義規範によって理性と感性の調和として厳密に構成した、全五幕の傑作悲劇。
儚いこの世と無窮のあの世が入れかわるときには、
その変化は、一度にして、瞬きする間もないほど素早く、
生じるよりほかないものなのです。
奥方さまも、神さまのおかげをもちまして、
あの一瞬にして、毅然たるご態度で、この世での希望を退け、
信仰にあふれるその御手で、天国をつかまれたのです。
Schillers ausgewählte Dramen. Wilhelm Tell
14世紀初頭、代官の圧政に苦しむスイス三州の民衆は、独立を求めて同盟し蜂起する――盟友の文豪ゲーテとの交遊を通じて構想された、〝弓の名手〟の英雄ヴィルヘルム・テル伝説、スイスの史実を材に、民衆の精神的自由を力強く活写した、劇作家シラーの不朽の歴史劇。
あの地獄の苦しみの瞬間に俺が誓った事は、
俺にとっては神聖な責務だ。俺はその務めを果たす。
1970年代、独り家を出てイギリスへ絵を描きに行く画家。生まれ育った東京の記憶を瑞々しく回想する青年、大災害で壊滅した世界を生き抜く二人の男……
言語と映像の関係を思考し続けてきた著者が作り出した
20世紀文学の記憶が様々に谺する文学空間
■目次■
リトル・ヴェニス
蝉【正しくは正字】しぐれ
口をきかない陰
「母への手紙」
風 (戯曲)
リトル・ヴェニス:ロンドン中央部、ウエストミンスター特別区にある三つの運河の集結地点の通称。本場ヴェニスに負けない雰囲気は、多くの人の憩いの場、癒しの場となっている。
パリの日本人コロニーを舞台にした「ジャポニズム・フィクション」として、20世紀初頭、欧米各地の劇場を席巻、「黄禍論」の議論を呼んだドラマ。「台風」現象としてセンセーションを巻き起こした、ハンガリーの劇作家レンジェルの代表作。
すべての国がマスティーユですよ。
すべての愛国心の本能、それはもう一つの、人の魂で鍛えられた銃で守られた要塞なんだ。それらを突き崩さなかればならない!
若きスタンダールとバイロンを熱狂させた異形の才能。18世紀イタリア最大の劇作家アルフィエーリ。王家の親子の確執を描いた「フィリッポ」、正気と狂気の狭間をゆれ動く古の王「サウル」。傑作悲劇2篇を収録。本邦初訳。
本書の訳者(菅野 類)による解題を
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1920年代イギリス、精神異常の烙印を押され、収容施設に収監された二人の女。抑圧され心を病む人に手を差し伸べる劇文学の傑作。
本書の訳者解説を
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木場が消えたころの東京・深川を舞台にした傑作戯曲 収録作:「水の行方――深川物語」「芝翫河岸の旦那――十号館二〇一号室始末」「深川の赤い橋」深川三部作と、「代書屋勘助の死――たそがれ深川洲崎橋」。解説:矢野誠一
シェイクスピア作品の登場人物が鏡の向こうで悪魔と出会うとき「地獄」の存在を揺るがす騒動が巻き起こる。謎と笑いが鳴り響く文学の冒険。収録作「リヤの三人娘」「マクベス裁判」「無限遠点 Romeo and Juliet」
全集未収録の、埋もれていた作家活動の原点である「芝居」3本
敗戦後を力強く生きる市井の人々のエポック。およそ60年前の書かれた現代劇「銀座並木通り」「冬の旅」「夫婦」を収録。