ヘンリヒ・シュティリング自伝 真実の物語

貧困に負けず学問を続けて大成する、独学者の数奇な人生行路を描いた18世紀ドイツの自伝文学。「疾風怒濤」運動の中心人物ゲーテ、観相学者ラヴァーター、思想家ヘルダーらとの親交から生まれた、〈ヴィルヘルム・マイスター〉よりも大衆に読まれた教養小説。本邦初訳。

◆本文より
聴衆の前で話しているとき、シュティリングは水を得た魚(うお)であった。話しているうちに彼の頭の中で概念がどんどん発展していき、しばしばすべてを言い表すための十分な言葉を見つけることができないほどだった。話しているとき、シュティリングという存在そのものが明るく晴れわたり、混じりけのない生命とその表出そのものになった。

ユング゠シュティリングのエネルギーの本質は、決して揺らぐことない神への信仰と、あらゆる災厄から間違いなく彼を救い出してくれる神慮への信頼に端的に表れていた。
──ゲーテ

現存するドイツ書のうち、最良の書であるエッカーマンの『ゲーテとの対話』を除けば、いったい何が繰り返し読まれるに値する散文文学だろうか。リヒテンベルクの『箴言集』、シュティフターの『晩夏』、ケラーの『ゼルトヴィーラの人々』、そしてユング゠シュティリングの『自伝』の第一書。これで当面は種切れであろう。
──ニーチェ

この素朴で胸に沁みる青春物語は、その飾らない筆致と相俟って、今もって感性の鋭い真面目な人々が耳傾けるに値する。
──ヘルマン・ヘッセ

「神の国」へ招かれた者の一人、まるで、そこからやって来て、「神の国」の存在を我々が見聞できるように保証してくれる人。
──ヨーハン・ペーター・ヘーベル

ユング゠シュティリング殿、私に真に実践的なキリスト教の要諦を教えてください。
──アレクサンドル一世