シラー戯曲傑作選 ドン・カルロス スペインの王子

「太陽の沈まぬ国」と謳われたフェリペ二世治下の盛期スペイン。王妃への秘密の恋に悩む王子ドン・カルロス、自由の国家の実現を目指すポーザ侯爵に、陰謀と策略をめぐらす宮廷の人々を交えて、友情劇、恋愛劇、政治劇が繰り広げられる。前期シラーの自由概念の到達点となった、全五幕の長大な歴史悲劇。

息子が母親に恋する。世間のしきたりが、
自然の秩序が、ローマの法律が
この恋を弾劾するだろう。僕の望むものは
父上の当然の権利と真っ向から対立する。
わかっているが、それでも好きなのだ。

シラー戯曲傑作選 メアリー・ステュアート

16世紀のスコットランド女王メアリーの生涯の〈最後の三日間〉を舞台に、カトリック対プロテスタントの宗教・政治的対立を描いて波紋を呼んだシラーの歴史劇。メアリーの「精神的自由」という理念のドラマを、古典主義規範によって理性と感性の調和として厳密に構成した、全五幕の傑作悲劇。

儚いこの世と無窮のあの世が入れかわるときには、
その変化は、一度にして、瞬きする間もないほど素早く、
生じるよりほかないものなのです。
奥方さまも、神さまのおかげをもちまして、
あの一瞬にして、毅然たるご態度で、この世での希望を退け、
信仰にあふれるその御手で、天国をつかまれたのです。

シラー戯曲傑作選 ヴィルヘルム・テル

Schillers ausgewählte Dramen. Wilhelm Tell 14世紀初頭、代官の圧政に苦しむスイス三州の民衆は、独立を求めて同盟し蜂起する――盟友の文豪ゲーテとの交遊を通じて構想された、〝弓の名手〟の英雄ヴィルヘルム・テル伝説、スイスの史実を材に、民衆の精神的自由を力強く活写した、劇作家シラーの不朽の歴史劇。 あの地獄の苦しみの瞬間に俺が誓った事は、 俺にとっては神聖な責務だ。俺はその務めを果たす。