「先生、私たち何のためにフランス文学なんか勉強するんですか」
文学と大学の落日をめぐる、ブラックユーモアあふれる長編小説
その後、絶望は深まりましたか?
日常に訪れる夜と夢。奥泉作品の萌芽が垣間見える幻の処女長編、初の書籍化。表題作に2編の短編を加える。
人のあわいを繋ぐ8つの短編
淡い交りだった。静寂な川の流れに、生きては会えぬ人のおもざし。あたうかぎりの寡黙と忍耐にひめた原爆の影。17年ぶりの本格短編集。
中国共産党によって破壊されるまえの北京天橋で鼓姫を愛した日本人男性が、50年の時を経て、その街で出会ったのは亡き息子の許嫁だった。「お義父さまの子を宿しました」 本文活版印刷、形のある本へのこだわりをこめた限定出版
中短編小説 3
漂白する伝説―絶望からの世直し(昭和60年-平成15年)
昭和天皇崩御から自身のマスコミ漂流時代を振り返る「昭和伝説」、阪神大震災をテーマにした「神戸鎮魂」、性の名作を21世紀に語り直す現代語訳「四畳半襖の下張」など、昭和の終わりから平成にかけての作品群を収録。
【収録作品】ビッグトゥモロウ・プレジデント、他人の夜、母・性愛、不器用な夜、渡るべき河、淫行礼讃、花園ラビリンス、一片のメロドラマ、「ヒロ」と「ヒロ」、遺した言葉、幻想酒場〈ルパン・ペルデュ〉、病気の話、文壇句会必勝法、歩く老人、模写美術館、画商奇譚、昭和伝説、小さな罪、当世百物語、年寄り殺し、新幹線9号車、めぐる歳月嘘の皮はぎ、六〇年代序章、刃の下、ただ盃をしめすのみ、歌仙殺人事件、終結、生き造り、「今晩は、キャスターです」、勝手にコンセント、神戸鎮魂 五十年目の娼婦、昭和二十年・女の館、陸軍「は」号特殊兵器、当節ナラヤマロック考、警察発表、記憶テスト、男子存廃此一腺、最後のエロ事師たち、風紀委員、万世一虫、現代語訳「四畳半襖の下張」、生娘いまいずこ、誰よりも妻を──
【巻頭口絵】特集雑誌、グラビア、出版広告など
【巻末資料】収録作品の手引き 野坂昭如参考文献案内 90ページ以上にわたり詳細を極めた「決定版野坂昭如年譜」(村上玄一編)録
長篇小説 2
繁栄の廃墟―世紀末幻想を嗤う(昭和53年-平成2年)
高度成長下の廃棄物問題をとりあげた「終末処分」、田中角栄をモデルに壮大なスケールで戦後政治史の裏側をとらえる「天地酩酊」、日本とパリを舞台に人々の不安な心性を描く「吾亦戀」など、多彩な活動の成果を活かした社会派作品をおもに収録。
【収録作品】終末処分、天地酩酊、私の他人たち、吾亦戀/参考作品(流れていまは)
【巻頭口絵】家庭風景、マスコミ活動、国内取材など さまざまな「戦争童話集」
【巻末資料】収録作品の手引き おもなエッセイ集と対談(座談)集の内容
中短編小説 2
闘争指南―あえて、ドン・キホーテ(昭和50年-59年)
失われた出版文化の悲喜こもごもを追想する「素晴らしき日本文壇」、自身のアメリカ取材を題材にした私小説的な「自働悪意」、わいせつ刑法を諷刺したアダルト・ビデオ版『エロ事師たち』ともいえる「輝け!刑法一七五条」など、政治・選挙運動や「四畳半」裁判といった「行動」の時代の資料と埋もれていた作品群を収録。
【収録作品】マントの悪夢、舌切雀、七つ下りの雨、オヤマタケル、至福万病、ハゲオとシワレット、痒みの研究、素晴らしき日本文壇、万古不易、集金旅行後日漫譚、母娘草、憑きもの、エフェドリン・モーニング、訪問者、すいません死んでます、室内走者の孤独、コンピュー盗、新宿和田組界隈、あちらとこちら、万里華讃歌、ワクチン人間、からくり車、溜まりの眺め、鉢巻幇間、自働悪意、陽気な妖女たち、お時さんの御守り、同窓会、日米酒合戦、輝け! 刑法一七五条、悪婆の選択、殺ったのは僕だ、日仏神前歌競べ、上手な使い方、花園のアリス、新橋ふう、姫育て、姥小町、ラグビー指南、先天性有徳症、みのむしの糸、彷徨、復活祭、眼福千年、偉大なる父、焼跡のマリア、新婚スワッピング、お婆さんの話、ヴァージン・ダイアローグ、日日是処女、荒唐夢契、あちらの時間
【巻頭口絵】海外取材、政治活動、「四畳半裁判」など
【巻末資料】収録作品の手引き 文庫目録 新聞・週刊誌に見る野坂昭如行動の軌跡
長篇小説 1
生き残りの闘争―餓鬼と修羅の原風景(昭和44年-52年)
焼跡闇市から放蕩の学生時代までを描く青春物語「餓鬼の浄土」、大阪の農村を舞台に戦後農業を問う「土の奢り」、自らの破滅の血筋・原点を辿る幻想的な「火系譜」など、おもに自伝的作品を収録。
【収録作品】餓鬼の浄土、土の奢り、好色萬載集、火系譜/参考作品(土と土の子、マイ・エレクササイズ)
【巻頭口絵】幼少から青春期 さまざまな「エロ事師たち」
【巻末資料】収録作品の手引き 長編小説発表紙誌と目次 新聞・雑誌にみる野坂昭如「作品評」
中短編小説 1
焼跡回帰―幸福のどん底を唄う(昭和39年-49年)
幻のデビュー第二作「色小町」、渥美清、小沢昭一ら主演で映画化されながらも未収録のまま眠っていた「スクラップ集団」、戦時下の幼い恋を描く「はやすぎた夏」など、旺盛な創作欲ほとばしる初期の作品を収録。
【収録作品】色小町、スクラップ集団、はやすぎた夏、わが放蕩、くりかえし、世間ソーラン師気質、現代退屈男、アメリカしろぼうず、裏切り者、鳶の墓、五人組奇譚、都の花、泥鰌地獄、父貸し屋、凶乱旅枕、蟷螂の夫、ポルノ地獄、雌雄決すべし、野坂昭如の小説のための広告、いちやづけ、乱交つかれ、長髪への挑発、二丁目ローレライ、天下分け目の躁鬱戦、少女狩り、投賊貴族、月下の鉄棒、春のうららの隅田川、健康病患者、餓鬼千匹の修羅、眠れる美女、スカトロフィー、自縄自縛、生きる理由、死ぬ理由、おとしばなし三種、赤門志願、七・五同盟、キック&ラッシュ、淫らやつれ、ふあんとむれでい、異穴の契り
【巻頭口絵】直木賞受賞、音楽・スポーツ、テレビCMなど さまざまな「火垂るの墓」
【巻末資料】収録作品の手引き 中・短編小説集と収録作品 新聞の新刊書籍広告コレクション
どうせ変わる世、狂いの翳に鵺が飛ぶ皇女和宮の降嫁道中に随伴した岩倉と幕府側の大沢基保の奇縁。幕末から明治を生きた、それぞれの運命。時代小説の名手が書き下ろす、新視点の岩倉具視像。
あの世とはいいところらしい。逝ったきり誰も帰って来ない。看取り、看取られるすべての人に贈る、高千穂の土俗を舞台に描く血と救済の物語。自身の実体験をもとにした渾身の書き下ろし長編小説。
作詞家・喜多條忠が書き下ろしたせつなくて、あたたかい「家族」。泣いて笑って癒される「実感」長編小説。重松清氏推薦!
はちきれそうな想い、切なさ― あなたの風船は何色ですか。栃木県小山市を舞台にした、バブル崩壊後、ロストジェネレーションの青春、恋愛、葛藤の日々。朝日新人文学賞受賞の気鋭による書き下ろし。
どこでもない どこか いつでもない いつか 生まれたばかり の なつかしい島 ぐちゃぐちゃ たぷたぷ いざなぎ と いざなみ が まぐわう 大蛇 鮫 三葉虫 が 蠢き 巫女貝 昔蜻蛉 爪水母 が 踊る。第21回三島由紀夫賞候補作。
みんなどこへ行ってしまったのだろう? 父、母、祖父、伯母、幼なじみ、恋人(?)そして町。 「しかしそれをいま思い出せば記憶は凹凸 していて、覚えていることの前後も はっきりしなくなる。」(本文より) 旅と記憶が織りなす、七つの物語。
80余歳を過ぎつつ、在所(若狭)のことが気にかかる。古里の山河にいまもきっといるに違いない妖怪たち……。名作『雁の寺』(直木賞受賞)の時空へと回帰しつつ、己が身の巡礼歌をきく珠玉作『たそ彼れの妖怪たち』『青墓まで』『美濃のおいずる』を収録。
「文革が始まってから、私はいつも独りぼっちだった。」 文化大革命のさ中に多感な少女時代を過ごした中国人作家が、瑞々しい日本語で綴る自伝的長編。