B・S・ジョンソンらと並び、1960年代イギリスで実験小説を発表し、女性であることの困難にも向き合った前衛作家アン・クイン。行方不明の少女が遺したテープと日記帳が夫婦二人の日常を軋ませ、次第に蝕んでいく――作者の自伝的要素も組み込まれた奇妙な長編小説。本邦初訳。
でもここで私は踏み込んで可能であるなら想像のまさに極限に至るまで浸ってみたい。別の水準を、更なる次元を獲得するんだ、できれば私と一緒に二人も連れていって。でも感情はどれくらい遠くまで広がり得るものなんだろう?
ポンペイ最後の日(下)
詳細年譜と訳者解題付 ヴェスヴィオ山爆発で壊滅したポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻がくり 広げられる不朽の名作の完訳。 数々の映画化で世界的に有名な小説であり、娯楽作品でありながら、人間の諸問題をあつかう大作。
ポンペイ最後の日(上)
ヴェスヴィオ山爆発で壊滅したポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻がくり
広げられる不朽の名作の完訳。
数々の映画化で世界的に有名な小説であり、娯楽作品でありながら、人間の諸問題をあつかう大作。
恋の霊 ある気質の描写
斬新な構成、独特な心理描写で、彫刻家である主人公の、三代にわたる女性への愛情が赤裸に描かれる――唯美主義、ダーウィニズムの思想を取り込み、〈性愛と芸術〉の関係を探究し続けた英国ヴィクトリア朝の詩人・小説家トマス・ハーディが最後に著したロマンス・ファンタジー。
ストロング・ポイズン
アガサ・クリスティらと、1920~30年代の〈探偵小説の黄金期〉を牽引した女性作家ドロシー・L・セイヤーズ――探偵らしさと男らしさの狭間で存在の不安に揺れ動く男性探偵の危うさに焦点を当てた、〈ピーター・ウィムジィ卿〉シリーズの重要な転換期となる奇妙な探偵小説。
個人的な感情が調査に影響したことはこれまでにもあったが、それが彼の知性を曇らせたことはなかった。彼は手探りをしていた――自分のことをあざ笑いながらあちこち逃げていく可能性を摑むために。出鱈目に質問しては目的を見失い、かつては刺激的だった時間の足らなさはいまでは彼を怯えさせ、混乱させてもいた。
個人的な感情が調査に影響したことはこれまでにもあったが、それが彼の知性を曇らせたことはなかった。彼は手探りをしていた――自分のことをあざ笑いながらあちこち逃げていく可能性を摑むために。出鱈目に質問しては目的を見失い、かつては刺激的だった時間の足らなさはいまでは彼を怯えさせ、混乱させてもいた。
放浪者 あるいは海賊ペロル
若くして祖国を離れ、他郷での船乗り体験から作家へと転身、複数の言語と文化を越境しながら、政治小説、海洋小説の名作を世界文学に残した〝二重の生を持つ人〟コンラッド――ナポレオン戦争期の南仏・地中海の、老練の船乗りの帰郷と静かな戦いを描く、知られざる歴史小説。本邦初訳。
憂鬱は、ペロルには馴染みのない感情だった。というのも、そんなものは海賊、つまり「沿岸の兄弟」の一員の人生には関係がないからだ。〔…〕陰気な憤怒や狂ったようなお祭り気分が外からやって来て一時的に爆発したことならあった。しかし、すべては空しいというこの深い内なる感覚、自らの内なる力を疑うあの気持ちを味わったことは彼には一度もなかった。
憂鬱は、ペロルには馴染みのない感情だった。というのも、そんなものは海賊、つまり「沿岸の兄弟」の一員の人生には関係がないからだ。〔…〕陰気な憤怒や狂ったようなお祭り気分が外からやって来て一時的に爆発したことならあった。しかし、すべては空しいというこの深い内なる感覚、自らの内なる力を疑うあの気持ちを味わったことは彼には一度もなかった。
フラッシュ ある犬の伝記
19世紀の英国詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの日常模様が、
愛犬フラッシュの目を通して語られる、ユーモア溢れる伝記小説。
ヴァージニア・ウルフが飼い犬に寄せたエッセイ「忠実なる友について」、
エリザベス・バレットの詩「わが忠犬、フラッシュに寄す」も収録。