ユダヤ人の女たち

文学の徒にして親友だったフランツ・カフカの遺言に逆らい、遺稿を守って亡命、カフカ全集を編纂して世界文学に貢献した作家・翻訳家マックス・ブロート――1910年代チェコのギムナジウムに通うドイツ系ユダヤ人青年の恋愛と蹉跌を赤裸に描く、ブロートの自伝的小説。本邦初訳。

失われたスクラップブック

“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めく、ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ――“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳で登場!

ジュネーヴ短編集

手書きの文字と線画を組み合わせ、コマ割マンガの創始者となったジュネーヴの作家ロドルフ・テプフェール――諧謔精神あふれる半自伝的小説「伯父の書斎」、アルプスの風土をスイスことばで描いた冒険譚「アンテルヌ峠」など珠玉の全8篇をテプフェール自身の挿絵つきで収録。本邦初訳。

□収録作
伯父の書斎
遺産
アンテルヌ峠
ジェール湖
トリヤン渓谷
渡航
グラン・サン=ベルナール
恐怖

スリー

B・S・ジョンソンらと並び、1960年代イギリスで実験小説を発表し、女性であることの困難にも向き合った前衛作家アン・クイン。行方不明の少女が遺したテープと日記帳が夫婦二人の日常を軋ませ、次第に蝕んでいく――作者の自伝的要素も組み込まれた奇妙な長編小説。本邦初訳。

でもここで私は踏み込んで可能であるなら想像のまさに極限に至るまで浸ってみたい。別の水準を、更なる次元を獲得するんだ、できれば私と一緒に二人も連れていって。でも感情はどれくらい遠くまで広がり得るものなんだろう?

あっちゃん

1960年代後半から1970年代前半にかけて、「ファイトだ‼ピュー太」「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」『新八犬伝』等々、夢中になった番組のこと、ADHD、好みの女子、小児性欲の記憶を、生まれ育った町、茨城・水海道と埼玉・越谷を背景にたどる自伝の試み。
私は自分の人生の半分以上はテレビだった人間だから、それをあえて書くことにする。書き下ろし長篇私小説。

ポンペイ最後の日(下)

 詳細年譜と訳者解題付 ヴェスヴィオ山爆発で壊滅したポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻がくり 広げられる不朽の名作の完訳。 数々の映画化で世界的に有名な小説であり、娯楽作品でありながら、人間の諸問題をあつかう大作。

ポンペイ最後の日(上)

ヴェスヴィオ山爆発で壊滅したポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻がくり 広げられる不朽の名作の完訳。 数々の映画化で世界的に有名な小説であり、娯楽作品でありながら、人間の諸問題をあつかう大作。

少年愛宣言

少年愛者でパンセクシャルの精神科医が 美少年を愛するがゆえの苦しみを解き放つ 自作小説・エッセイ/美少年「みこいす」の写真/雨依はると・村祖俊一のコミック/須永朝彦の短歌

枯草のクッションを敷いた古馬車

1998年の『定本尾崎翠全集』刊行以後、新たに発見された小説“小野町子もの”=「書簡集の一部分」をはじめとする書籍初収録作品の集大成。 かつ『全集』解説の誤りを正す解題、最新版の年譜等も収録。

二匹のけだもの/なけなしの財産 他五篇

東欧ユダヤ文化の「生き証人」としてポグロム(虐殺)と亡命の記憶を活写した、ドヴィド・ベルゲルソン。
「隠遁者」の筆名でスターリニズムのテロルを予感させる幻想的な作品を発表した、デル・ニステル。
スターリン時代に粛清されたイディッシュ文学の代表作家二人の傑作短編集。

ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集

【在庫僅少・重版中2月末でき予定】
ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820~30年代にかけて発表された、ラウパッハ『死者を起こすなかれ』、シュピンドラー『ヴァンパイアの花嫁』など怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳。ヴァンパイア学者が詳述する訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」を併録。

ガリバー

『フランドルへの道』『ファルサロスの戦い』『農耕詩』など、前衛的、実験的小説作品を発表した〈ヌーヴォー・ロマン〉の代表作家クロード・シモン――シモン独自の書法で紡がれた、第二次大戦末期の、とある日曜日の出来事の〈居場所のなさ〉をめぐる初期の長編小説。本邦初訳。

戦争

20世紀のスキャンダル作家セリーヌの死後60年の時を経て発見され、「21世紀の文学史的事件」と国内外で話題を呼んだ幻の草稿群のひとつ、『戦争』――『夜の果てへの旅』に続いて執筆された未発表作品にして、第一次大戦下の剥き出しの生を錯乱の文体で描き出した自伝的戦争小説が本邦初訳で登場!https://www.genki-shobou.co.jp/wp-admin/upload.php

ドイツの歌姫 他五篇

森鷗外『舞姫』を彷彿させる、ドイツ留学したエリート医学生の西欧との出逢い、東欧との疎隔とその葛藤を描く自叙伝的作品『ドイツの歌姫』。古き良き民衆を大らかな共感と深い洞察で活写し、19世紀セルビアのリアリズム文学を確立したラザーレヴィチの中短編6篇を収録。本邦初訳。

江戸役者

「河原者たア誰を指した。江戸随一の團十郎だ。てめえの眼は節穴だな。」

邦枝が誘(いざな)い、雪岱が開眼した江戸風情の世界。
八代目市川團十郎を軸に描く人間模様。
『おせん』に先立つ一年前の、記念碑的作品。
雪岱研究者の真田幸治により単行本初収録の挿絵70点を完全復刻し刊行。

モン=オリオル

レジャーと治療、自然のスペクタクル、社交と娯楽、投機と事業、源泉所有権をめぐる資本所有者たちのたくらみと諍い、恋愛と姦通――温泉リゾート「モン゠オリオル」を舞台に種々様々な人間たちの「感情」が絡み合う、モーパッサンが描く一大〈人間喜劇〉。

訳者解題の一部をnoteで公開しています。

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乾杯、神さま

メキシコ革命を兵士として生きた後、労働者として、変動するメキシコシティの地を這って生きるヘスサという女性は何者か――ジャーナリストの経験を活かし、一個人の証言を多声的な〈女性〉の物語へと昇華させた、セルバンテス賞受賞の女性作家によるルポルタージュ文学の傑作長編。本邦初訳。


ポニアトウスカ『乾杯、神さま』の本文で、脱字等の誤植がありました。

p.203・上段・5行目
(誤)
わたしは一気に女たちに(改行)
し立てた。

(正)
わたしは一気に女たちに捲し立てた。

ここに訂正してお詫びいたします。

本書訳者解題の一部はnoteで公開しています。

昼と夜 絶対の愛

アポリネール、ブルトン、レーモン・クノー、イヨネスコ、ボリス・ヴィアンら20世紀フランスの前衛作家たちに多大な影響を与えた、不条理の作家アルフレッド・ジャリ――兵役体験における生と存在を夢幻的に描く『昼と夜』、催眠術によって新しい世界を創造しようとする『絶対の愛』の小説2篇を収録。

蛍日和

出会い、引っ越し、再婚、断煙、禁断症状、不安神経症、ノイローゼ、睡眠障害、鬱、妻の事故……その屈託に寄り添った妻との十五年。4篇収録

廊下で蛍とすれ違うことがある。といっても大抵はトイレから出て来た蛍の脇を私が通るのだが、狭いから、蛍は片側の壁に、両手をあげてピタッと張り付き、「あじのひらきッ」と言うのである。


【収録作】
蛍日和
幻肢痛
幕見席
村上春樹になりたい

死にたさの虫が鳴いている

ある精神科医の、少年時代からの、インモラルな心の軌跡。

溝口病院の当直室から、駅の線路が見える。
ガタンガタンと通る列車が見える。ガタンガタンと、死にたさが鳴る。

ハハ、みんなの死にたさを
だれも だれしも
癒すことなんてできないから、きょうも私は
虚無に供物をささげているのです


著者: 1989年:東京生まれ。ほか非公開
装画:村祖俊一